「社会の残酷な現実」について入社前に教えてくれた“左ききのエレン”とは

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青戶一貴(かずき)

好きなことは「漫画・睡眠・Mr.Children」

こんにちは。WEB広告・システム部の青戸です。

突然ですが、皆さんは仕事で「どうしようもない壁」にぶつかった時、どうやって乗り越えていますか?

入社して5年。僕自身、教える立場にもなり、少しは一人前になれたかな、なんて思っていた矢先に、自分の無力さを痛感するような大きな壁にぶつかることが今でもあります。
「自分の頑張りが、全く成果に結びつかない…」
「社内の要求に、どう応えるのが正解なんだろう…」

そんな風に一人で思い悩んでいた時、僕の仕事への向き合い方をガラリと変えてくれた一冊の漫画があります。それが、今回ご紹介したい『左ききのエレン』です。

「え、漫画?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この作品は、あの生産性の鬼として知られるマコなり社長が「払ったお金以上に価値があるモノ 第2位」とするほど、ビジネスの本質が詰まった一冊なんです。

引用: https://youtu.be/JyHoCMv02xo?si=IYR7kwk_Hqt9OxCm

今回は、僕がこの漫画から受け取ったメッセージを、僭越ながら、少し熱を込めて語らせていただきます。この記事を読んでいただき、「ああ、そういう視点もあるな」と感じていただける部分があれば、これほど嬉しいことはありません。

少し長くなりますが、お付き合いいただけると幸いです。

この物語は、なぜ私たちの胸を打つのか

ご存じない方のために、簡単にあらすじをご紹介します。

この物語の主人公は二人。一人は、圧倒的な才能を持つ「天才」画家、山岸エレン。もう一人が、大手広告代理店で働く、自分を「凡人」だと自覚しているデザイナーの朝倉光一です。

物語は、この「天才」と「凡人」の人生を軸に、クリエイターたちが才能に嫉妬し、もがき、それでも何かを「つくる」ことに人生を賭ける姿を描いた群像劇です。

この作品のキャッチコピーは冒頭の画像にあった

「天才になれなかった全ての人へ――」。

この言葉は、多くの社会人の心に深く響くのではないでしょうか。会社という場所で、自分より優秀な同期や、圧倒的な実力を持つ先輩方を目の当たりにし、「自分は天才ではなかった」という現実と向き合った経験は、誰にでもあるかと思います。

この物語が素晴らしいのは、そこから目を背けさせないことです。「天才ではない自分」という現実を受け入れた上で、では、どうすればこの世界で価値を生み出せるのか?どう戦えばいいのか?そのための、極めて実践的なヒントが全編に散りばめられているのです。

ここからは、僕が特に心を揺さぶられ、仕事の指針にしている「この漫画が教えてくれた、プロとして働くための2つの視点」をご紹介させてください。

【視点①】本当の実力が試されるのは、「最高の瞬間」ではない

これは、僕がこの漫画で最も衝撃を受けた言葉の一つです。

主人公・光一の師であり、伝説的なクリエイターである神谷(かみや)が、若き日の光一にプロの基準を叩き込むシーンで登場します。

皆さんも、こんな風に思ったことはありませんか?

「今日は体調がいいから、いい仕事ができそうだ」
「人間関係のストレスがなければ、もっと集中できるのに」
「この急な仕様変更さえなければ、最高のものが作れたのに」

その気持ち、すごくよく分かります。誰だって、万全の状態で仕事に臨みたいですよね。

でも、この言葉は教えてくれます。私たちが心の底から「今日は万全だ!」と思える日など、プロとして働いている限り、おそらく一生やってこない、ということを。

プライベートの悩み、寝不足、同僚との意見の対立、お客様からの厳しいご指摘…。仕事とは、常に何かしらのマイナス要素や逆風の中で進めていくものです。

神谷は、光一に「プロとは何か」を教えます。

「クソみたいな日」に、「クソみたいなもん」しか作れないのは仕方ない、では通用しない。
「クソみたいな日」だからこそ、自分の持てるプライドとスキル、経験のすべてを総動員して「いいもん」をひねり出す。それこそが、対価をいただいて仕事をするプロフェッショナルなのだと。

「コンディションが万全なら…」という言葉は、もしかしたら自分を守るための言い訳なのかもしれません。この漫画は、本当の意味での実力とは、最高のパフォーマンスではなく、最悪のコンディションで、どれだけの価値を安定して提供できるか、その「最低保証クオリティ」にあるのではないかと、私たちに問いかけてきます。

だからこそコンディションが悪い日こそ、「ああ、今こそ自分のプロとしての真価が問われているんだ」と思えるようになりました。

【視点②】「頑張り」を評価されるのは学生まで

次にご紹介するのも、同じく厳しい言葉です。ですが、これもまた、仕事をする上で決して忘れてはならない視点だと感じています。

これは、業界の第一線で戦うトップクリエイター・岸(きし)あやのが、大学生だった時の主人公・光一に、現実を突きつけた時のセリフです。

学生時代までは「頑張った過程」も評価されたかもしれません。夜遅くまで勉強したこと、誰よりも練習したこと。その努力自体に価値がありました。

しかし、ビジネスの現実に最も近いプロデューサーである岸あやのは、その感傷を許しません。

彼女の視点は、極めてシンプルです。

どんなに寝ずに考えようが、チーム一丸となって努力しようが、数字が振るわなければ、それは失敗。

これが、ビジネスサイドの冷徹な、しかし曇りのない視点なのです。

ただ、この厳しい成果主義は、見方を変えれば、非常にフェアな考え方でもあると僕は思います。

世界的な広告会社CP+Bには、「The best idea is boss.(最高のアイデアがボスである)」という有名な社訓があるそうです。

これは、組織では役職や経験に関係なく、ただ「最高のアイデア」だけが全てを決定するという思想です。

つまり、「がんばったで賞」はない代わりに、「最高のアイデア賞」は間違いなく存在する、ということです。

私たちの「頑張り」というプロセスには誰も直接お金を払いませんが、私たちがひねり出した「最高の成果」には、お客様は喜んで対価を払ってくださいます。

「こんなに頑張ったのに…」と嘆きたくなった時、この言葉は、私たちの仕事が一体何によって評価されるのか、その原点に立ち返らせてくれます。プロセスに自己満足せず、その先にある「成果」にどこまでコミットできるか。プロとして働き続ける上で、常に自問自答すべきテーマだと感じています。

最後に:僕らがこの世界で戦うための、一つの「武器」として

ここまで、僕個人の解釈を熱く語らせていただきました。

この漫画が教えてくれるのは、小手先のテクニックではありません。

逆境の中でいかに自分の最低ラインを引き上げるか。

そして、プロセスに逃げず、いかに成果に執着するか。

それは、この変化の激しい時代で、私たちがプロとして長く生き抜くための「揺るぎない軸」になるのではないかと、僕は信じています。

この記事を読んで、少しでも皆さんの心が動いたなら、ぜひ一度、『左ききのエレン』を手に取ってみてほしいです。きっと、今のあなたの心に響き、明日からの仕事の支えになる言葉が見つかるはずです。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

アイコン この記事を書いたレポーター

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